2014年4月13日日曜日

【映画】「凶悪」を見たから感想をぶっこむ!!【監督 白石和彌】



福知山シネマで見たかったのですが、時期を逃してしまい見れなかった作品。iTunesでレンタルしました。こういう実際にあった事件をベースにした映画好きです。「現実は小説より奇なり」って言葉がよく分かる。映画としてみても俳優さんの演技がたまらなくいい。特にピエールさんなんか龍馬伝の溝渕さんですよね??同じ人ですよね?ってなんども問いたくなるほど怖いし、首謀者の木村演じるリリー・フランキーさんも落ち着いた冷徹的恐怖を見事に演じきっている。

拘置所から首謀者に復讐する死刑囚


ストーリーの軸はシンプル。主人公の藤井(山田孝之)は拘置所の収監中の須藤(ピエール瀧)からの手紙がきっかけで面会をして話を聞く。そこで、須藤が裁判中の事件の他にも数件殺人を犯したと告発する。その告発の動機は首謀者である木村(リリー・フランキー)への復讐。最初は死刑囚の証言なので半信半疑だったが取材を進めていくうちに藤井は須藤の証言を真実だと確信する。そして、十分な証拠を揃えた上で取材した事が記事になり木村の逮捕へとつながる。

上記はネタバレっちゃネタバレだけどこのストーリーラインは誰も想像がつくだろうしこの作品の面白さはそこじゃないと思うので…この事実を知った上で詳しくはどうだったんだろう?って詳細を見ていくところが面白いかなと思ったので書かせてもらった。

エンターテイメントとしてもよく出来た作品


実際にあった事件だし、単純に面白かったって終わっていい作品ではないと思うが、正直面白かった。エンターテイメント作品としてよく出来ていると思う。先程も書いたが、詳細を知っていくところ、これなぜこうなったの?とか事件のいきさつは?って野次馬根性をくすぐられる。

前半は、主人公藤井が死刑囚須藤の証言を元に事件の関係者と思われる人々に取材をしていき情報を集めていく。須藤との面会と証言である程度事件の個々の事件の輪郭が分かったら後編に入る。後編は時間をさかのぼって木村、須藤視点で犯行を行った詳細が描かれるのだ。

後編は、犯人たちがどんな生活を送っていてどういう考え方なのかが描かれている。非常に怖く、こういう人達に目をつけられたらどうしようって映画を見ながら怯えてしまう。更に、これが完全なフィクションじゃなく実際にあった事件だということが更に恐怖感を増長させている。このスパイスが同じ映像でも尋常じゃなく怖く感じる。嘘じゃないんだって感じがほんと怖い。

終盤は、裁判シーン。この事件の記事が発行され、それが元に木村が逮捕され裁判にかけられる。このシーンでの須藤に対して主人公藤井が声を荒げるところが非常に印象的。錯覚してた味方的な感覚から目覚めさせられる瞬間がとても気持ちよかった。

味方が敵に変わって行く感覚


先程も書いたとおり、死刑囚須藤が余罪を面会で発言し、それを追って首謀者である木村を逮捕しようというのが基本的なストーリーライン。前半は、正義感の強い主人公藤井視点で描かれているので敵の敵は味方と言った具合に、須藤と協力をして曖昧な記憶と取材を繋ぎ合わせ事件があったという確実な証拠を固めていく。だから、前半では須藤が頼もしい味方に見えてくるんです。

頼もしい味方と言えば語弊があるかもしれませんが彼の中には決定的な証拠の鍵が眠っていて彼はそれを差し出そうと協力的である。だから味方のような気がするんですね。ただ、後半は犯罪者視点で彼らがどう犯罪を犯したが描かれます。

それを見た後だと自分の中でさっきまでの味方感がちょっと雲がかっている感覚に気づく。こいつってあの事件犯した実行犯だよなと。ただ、須藤は拘置所の中で罪を償う方法と言って生きる希望まで見出していく。

「当初からわかっていたことだけどやっぱりこいつも許せねぇ!!」

そんな気持ちが、法廷シーンで言語化された時はある種のカタルシスが生まれました。

主人公が持つ家族の側面


この映画で大きく扱われるのが、ある老人の家族がこの老人が作った借金を返済するために、木村の提案に乗り老人を殺し保険金を手に入れるっていう保険金殺人です。その他にも資産を持つ老人を老人ホームの人間と手を組んで殺害し土地などを手に入れるってのもあります。老人を使った錬金術と言うようなことを作中のセリフにもありました。

一方、この事件を追う藤井の家庭にはボケてしまった母親とその面倒をみてる妻との問題も抱えています。妻はもう介護は限界だと嘆き何度も藤井に老人ホームに入れようと言いますが、藤井はどこか煮え切らず問題を先送りして仕事により没頭してしまう。

追っている事件では大きな借金を作った親を殺して保険金で返済するか?って悩む描写を見せながら、主人公サイドではボケてしまった実の母を介護施設に入れるかって苦悩する描写があります。もちろん、片方は犯罪、片方は社会で十分に許容された選択肢です。ただ、実の親を疎ましく思ってしまい、自分の力ではどうしようもなくなってしまい他者から選択を強いられた時どうするか?って所では苦悩の共通点が見えます。

主人公がとった選択は僕自信の身に置き換えても同じ選択をすると思う。後ろめたい気は十分にあるが、苦しみの継続よりその先にある希望に手を差し伸べてしまうだろう。そういう意味で木村と共謀して親を殺したあの家族も自分と同じかもしれない。自分がそういう状況に置かれたらその選択をとってしまうかもしれないのだから。そんなことを考えてしまいました。

社会的メッセージが強くても興味深いエンターテイメント作品


この作品、社会性が強いです。僕が受け取った、解釈したメッセージは事件の詳細を知りたいっていう野次馬根性を否定するか肯定するかって問いかけです。作中でも藤井と妻との会話であるのですが、「楽しかったんでしょ?悔しいけど私も楽しかった」というセリフがあります。僕も主人公に感情移入して正義感のつもりで取材して首謀者を法廷の場に引き釣りだせ!!と思ってました。事件の詳細を追うたび、その気持ちが強くなるのですが「面白い」って思ってるのも事実。面白くなければ見るのやめちゃってるでしょうしね。この正義感と野次馬根性って表裏一体でどちらも両立するもんなんだなぁ〜って事を感じた作品でした。

ただ、野次馬根性を利用して記事になった週刊誌が売れ、警察が動き木村を逮捕でできたってのも事実。正義感からくる使命を世間の野次馬根性によって達成できたとも言えます。う〜ん難しいw

最後に…


長々と書いてしまいましたが、とても面白い作品です。メッセージが強いのに面白い。単純なエンターテイメントじゃないのに面白い。自分の主張を伝えたい人はまず、主張をどう伝えるかを考えるのじゃなく楽しい、面白いとみんなが思うことにどうやって自分のメッセージを組み込んでいくかを考えるほうがいいんだなと思った。僕自身ベーシック・インカムっていう今の世間では賛成が得られにくいと思うシステムを広めたいと思っている。それにはただ、ベーシック・インカムを説明するだけではなく、どうエンターテイメント性の中にベーシック・インカムの良さを盛り込むかを考えなければいけないと作品を通して感じた。

作品は興味ごころをくすぐられ一気に見てしまう面白い作品です。DVDも最近出たみたいですし是非鑑賞してみてください。



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